小さな小さな子犬ちゃん

38/45
前へ
/617ページ
次へ
「奥様も仰っておられましたよ? 女の子は美しくあるべき、と」 ピアナはくどくどとそういう。 「十分私は美しくいるわよ。私にとっての強さは美しさそのものなの」 つん、と鼻先を高くしてカレナはそういった。 随分なすまし顔だが、強さと美しさは関係が無い。 「では、もう少し慎みを持っては如何ですか。そんなことではファイ様に嫌われてしまいますよ?」 その単語にカレナは顔を更に赤くした。 もう、耳まで真っ赤だ。 「嫌われても構わない!」 強がりを言う。内心では嫌われたくないと、そう思っているのに。 「全く、ファイ様の写真をベッドの横に置いておられるのに、良くそんなことがいえますわ」 「そ、それとは……関係ないわ」 「どうして、お嬢様はそこまで強さにこだわるのですか?」 その疑問を口に出す。まだ、彼女はその理由を知らないのだ。 主人の事を敬愛するのに、過去は関係ない。余計な詮索などしないのが、彼女の従者としてのポリシーなのだ。 「……逆に聞くけど、貴方は一体どうして強くなろうとするの?」 カレナは少し躊躇った後に、そうピアナに聞き返す。 「お嬢様をお守りする為ですわ」 真顔で即答。当然の答えだ。 ピアナとしては、自分の忠誠心を疑われたようで、若干心外だが。 「私は守られるのは嫌なの。守れるようになりたいから、強くなるのよ」 正確には、守られたから。無力だったから。 カレナの回答を聞くとピアナは溜息を吐いた。 もともとこうと決めたら動かないお人だ、と諦めてしまう。 「そんなことよりも、貴方に子供が出来たらしいわね」
/617ページ

最初のコメントを投稿しよう!

7442人が本棚に入れています
本棚に追加