小さな小さな子犬ちゃん

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気がつく、とはいっても気が利くとはまた違った意味なのだけどなぁ、とカレナは思う。 何せ、リオンはやたらと世間に詳しいのだ。しかもやたらと勘が鋭いと言うか、なんと言うか。 「むしろ、気味が悪いくらいです」 確かに、と女子三人組は笑い合う。 確かに、すらすらと内心を言い当てられてしまっては、気味が悪い以外の何物でもない。 そうして、そこから平和な会話が始まっていく。 女が三人寄れば姦しいとはよく言ったものだが、本当なのだから仕方ない。 その姿は実に平和な女子高生の会話風景だ。 テレビ番組など、当然化粧についての会話もあった。 平和だ、平和すぎる。 世界では未だに戦乱が収まっていないと言うのに。 彼女達の世界は、平和なままだ。平和平和。いいことだ。 きっとこれから起きることは知らなくても良いのだろう。 本当なら、知る必要もなく、関わることも無く、きっとどこかで起きていた事に過ぎないのだろう。 そうであったらどれだけ良かったのだろうか。 時間は過ぎて放課後。 結局、校庭を本当に千周走らされたワルキは、ふらふらの足取りで自室まで戻ってきた。 幾ら体力馬鹿の彼でも、流石に千周は体に堪えるのだ。 昼飯なんて食べている暇も無いし、食べたら間違いなく戻していた。僅かな水分だけで、ずっと走り続けていたのだ。 因みにファイは、千周終わると同時にぶっ倒れて、カレナに回収されていった。 見事に肩に担がれていたのを見てしまったのだ。女子の肩に担がれるのびた男子、と言うのも中々シュールだ。 きっと帰ったらカレナが手当てをしてやるのだろう。 やれやれ、羨ましいことこの上ない。 自分も出来ることならピアナに体の面倒を見てもらいたいものだ、とワルキは常々思う。 が、それは甘えだと言う事くらいは分かっている。 自力でどうにか出来てこその男だ、と言わんばかりに自力で自室まで戻ってきたのだ。 「ただいま……」 薄っぺらな鞄を片手に、ワルキは扉を開ける。 「お帰りー!」と子供の声が響いてくる。 流石に慌てて、ワルキはとっさに部屋の扉を閉めた。
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