小さな小さな子犬ちゃん

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確かに、獣人の子供となればただの迷子、と言う事は少ないのかもしれない。 「もし、ただの迷子で無いとしたら、一体何なんだ?」 無邪気な笑みを浮かべているジェンを見ながら、ワルキは静かに尋ねた。 「さて。何処かの王家の子供だったりしてな?」 冗談交じりに彼女はそういった。 彼女は別に何か考えがあって、そんなことを言ったわけではない。 だけど、ワルキにはその言葉がやたらと頭に残った。 非常に嫌な予感がする。 王家、と言われて思い浮かぶのが春先のあれだ。 いやいや、あんなことが二度もあってはたまらない。 きっと偶然迷い込んできただけの子供だろう。 そう信じることにした。 そう信じていたかった。 二人の間に沈黙が流れ、子供の笑い声が部屋には流れた。 それが、たまらなく彼の耳にねっとりと纏わりつくのだ。 嫌な考えなんて吹き飛ばすように、ワルキはかぶりを振ると「汗流してくる」と言って、シャワーを浴びに浴室まで向かう。 幾ら秋に近くなっていても、走れば汗をかく。 そしてあれだけ走らされたのだ。体中が汗でびっしょりだ。 帰ってくるまでにいくらかは乾いたが。 ワルキがシャワーを浴び終わると、すぐに食事となった。 子供達がおなかすいたと駄々をこね始めたからだ。 ワルキもそれには賛成だった。走り回って、腹ペコだ。
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