国を統べるには

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平和な昼休み。 この時間だけは、授業とは異なり、自由に過ごすことが出来る時間だ。 この学校においては、メリハリを何よりも大事にしている以上、この時間だけは普段授業中、引き締まった態度を見せる生徒でも、やたらとだらけている。 そんな中、ワルキはヘルが持たせてくれた弁当に舌鼓を打っていた。 実に美味しい。 全く持って幸せだ。 女性からの手料理と言うのは、何時の時代でも男性を幸福に出来る力を持っている。 それに加えて、ワルキの普段の食糧事情が宜しくないのは、前にも書いたとおりである。 幾ら化け物じみた女の弁当であっても、嬉しくないわけが無いのだ。 一口一口、味わって食べていると、彼の持っていた携帯端末が振動した。 それは携帯電話とも呼ばれる機械だが、それとは若干異なる。 何せ、電力を殆ど使用していないのだから。 この端末の主な使用方法は魔力による通話、すなわち念話である。 念話というと、人と人の脳内だけで会話をするようなイメージがあるが、そんな高等技術が世間一般の大衆に使用できるわけも無い。 そもそも、自分の意思を魔力に乗せて相手に飛ばすと言う事の難しさは異常だ。 受け取る側は受け取る側で、それなりの準備を必要としている。 それに、オープンチャンネルの無線を使っているようなものだ。 下手をすれば、脳がパンクしてしまいかねない。 そこで開発されたのが、この携帯端末だ。 これを使えば、必要な相手に必要な情報を魔力で飛ばすことが可能だ。 内臓バッテリーを使用するのは精々、機能維持程度。一度の充電で一週間は持つと言う代物だ。 因みに、これを買ってしまったから、ワルキの懐は真冬になってしまったのである。 まぁ、維持費に金のかかる携帯電話を買うよりも、金の掛からないこちらのほうが経済的なのは言うまでも無いが。 誰からかかって来たのだろうか? 疑問に思いながらも通話ボタンを押す。 「もしもし」 「小僧、今すぐここに来い!」 怒鳴り声がいきなり響いてきた。 「一体何だよ。と言うか、あんた誰?」 「五月蝿い! とっとと来い! 状況を説明している時間も惜しい! くっ!」 電話の向こうから、何かが爆発したような音が響いている。 「おい! 一体何だってんだ!」
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