国を統べるには

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ワルキがそう問いかけると、苛立たしげな舌打ちが耳をつく。 「私だ! いいから今から言う場所に来い!」 声の主は一方的に場所だけを言うと、そのまま通話を切ってしまった。 指示された場所はこの学校から十数分の場所。 とはいっても、未だに荒廃したまま手のつけられていないような、裏通りだ。 治安の悪い場所で一体何が起こっているのやら。 声と話し方で誰かは想像がついたが。 弁当箱の中にはまだ残っているが、そんなことを気にしていられる訳でもなく、そのままにして教室から飛び出た。 あまりの慌てっぷりに、教室にいた生徒達全員が、彼の出て行った扉を見送っていた。 ワルキが切羽詰った風な表情で、慌てている所なんて誰も見たことが無かったから。 ワルキは一人走る。 制服姿のまま。 指示された場所へはすぐに到着した。 昨日、あれだけ走ったにもかかわらず、これだけの速度で走れたというのは、やはり日々の鍛錬のお陰だ。 指示された場所はなんとも、無残な光景となっていた。 薄暗い路地裏は、化け物でも暴れまわったかのようだった。 地面はえぐられ、壁は切り裂かれている。 傷跡は新しくそれはどんどんと奥へと進んでいっている。 成程、理解できた。 ワルキはこれを目印に、走っていく。 一体何が目的か。 それを理解する気は無い。 ただ、走る。
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