国を統べるには

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数分もしないうちに戦闘音が聞こえてきた。 視界に入ってきたのは、防戦一方のヘル達だった。 どう見たって、本気ではない。 彼女は死神だ。その気になれば、すぐにだって敵を倒すことが出来るだろう。 ただ、多勢に無勢。 おそらく、ジェンをかばって戦闘をしているために、本気を出せていないのだろう。 敵は十人程度。 ヘルからすれば、数にも入らないことだろう。 敵の姿はよく分からないが、やたらとすばやく獣じみた動きをしているのが、よく分かる。 壁から壁へと跳躍しながら、トリッキーな動きでヘル達を攻撃している。 主な目標は、やはりジェンらしい。 先程から、執拗にジェンばかりを狙って攻撃をしている。 人間か、獣なのか。果たしてどちらなのだろうか? いや、今はどうだって良い。 助けなければ。 「ヘル!」ワルキは声を上げて叫ぶ。 「遅い!」ヘルは向かい来る攻撃を防御しながら叫ぶ。 「ち、増援か」 敵の一体が舌打ちをしながらそういった。どうやら人間らしい。 それにしては随分と獣じみた動きをしていた。 よくよく見てみると、そいつらには動物の耳と尻尾が生えていた。 それはジェンと一緒のものだ。 ワルキの目の前に、一人の男が立ちふさがる。 どうやら、先へは行かせない心算なのだろう。 上等だ。 獣人の身体能力がどの程度のものかは知らないが、真っ向からぶつかって突き進んでやる。 武器であるトンファをその手に、ワルキは構える。 先手必勝、そう言わんばかりに速攻をかける。 おもいっきり地面をけって、渾身の一撃を与えてやる。 速度、威力共に申し分ない。 やはり、相手はワルキのことを子供と思って油断していたらしく、その一撃をしっかりと食らってしまう。 その一撃で怯んだ隙に脇をすり抜け、背中にけりを叩き込んでやると、男はその場に倒れた。 これで戦闘不能になったわけではないだろう。だが、今はジェンの所に辿り着くのが先だ。 倒れた男にわき目も振らずに、ワルキは一気に加速した。
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