国を統べるには

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後はジェンの所までノンストップで走り続ける。 途中で矢やら、魔法やらが飛んできたが、気にも止めずに走る。 幾らかは掠ってしまったが、大した傷じゃない。 ヘルの隣まで来ると、彼女からのありがたいお小言が耳に入ってきた。 「遅い! 私が連絡してから大分経ったぞ!」 「五月蝿い。こっちは昼飯を食っている最中だったんだぞ!」 「そんなことは聞いてない! ともかく、ジェンをつれてさっさと逃げろ」 「はぁ? 何で」 「お前がいた所で足手纏いだ。それに、この子がいる時点で強力な魔法は使えない」 「何のためのガルナだよ」 「そのガルナに追いつける連中だ。鬱陶しい」 「そうかよ。だったら後は頼んだ」 ガルナに追いつけるような連中と相手をして、勝てる気はしない。 それに、相手は獣人だ。 普通に考えても身体能力はあちらのほうが上だ。 さっきは油断と不意を突いたお陰で、何とかこけさせることは出来たけど、今度はそう簡単にはいかないだろう。 だったら三十六計逃げるにしかず、だ。 学校でも、最初から勝つ見込みの無い相手とは戦うのは馬鹿のやることだ、と教わっている。不本意極まりない。が、やはり集団で行動をする以上、そういった発想は大切だ。 自分一人が死ぬのなら構わないが、仲間も殺してしまいかねないから。 ジェンたちの逃亡に気がついた、敵はすぐに二人を追おうとする。 しかし、それをヘルは許さない。 「さて、本気を出させて貰うわ」 かなりストレスが溜まった口調で、彼女はそう宣言したのだった。 一方ワルキは、一本道をひたすらに走っていく。 出口が見えるまでそう時間は掛からない筈だ。
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