国を統べるには

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とはいっても、ジェンを抱えて走るのは中々に重労働だ。 幾ら軽い子供とは言っても、これまで全力疾走してきた肺が、そろそろペースを落とせと言っている。 流石に全力はそう何分も持たない。 あと少し、という所で全身から力が抜けて行ってしまう。 足がもつれて、その場に倒れてしまった。 「な……んだ……!」 ワルキはそう言う。 ジェンは、ワルキがこけたときに綺麗に放り出された為、何とか無難に着地する事が出来た。 「ワルキさん! 大丈夫!?」 うつぶせになって倒れているワルキに近寄って、心配そうに声をかけるジェン。 大丈夫か、と聞かれたらそうではない。 意味が分からない。 体が痺れて力が入らないのだ。 一体何故……疑問に思いながらも、ワルキはジェンに指示を出す。 「俺は良い、早く……」 逃げろ、そう言おうとした瞬間だった。 「まったく手間取らせやがって」 男の声が聞こえた。 どうやら、伏兵だったらしい。 他にも数人、前方から現れた。 どうやら、最初から挟み撃ちにする気だったらしい。 こんな陳腐な罠に引っかかってしまうなんて。屈辱で死んでしまいたくなってしまう。 「まぁ、生け捕りに出来たのは良い事か。こっちの方が高いしな」 そういうと、ジェンに手を伸ばす男。 「さわ、るな!」 力を振り絞って、その手を払うワルキ。 だが、それが最後の抵抗となってしまった。 それ以降、力が全く入らない。 「おうおう、まさか動けるとはね。あの薬はかなり強力な代物だぞ」 愚痴るように、そういうとはじかれた手のひらをぷらぷらと揺らす。 「まぁ、いい。こいつを回収して、この糞ガキにとどめさしとけ」 男がそういうと、部下と思われる男がジェンを抱えて、もう一人が剣を振り上げた。
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