国を統べるには

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巫山戯るな! 何もしてねぇで、無駄死にするのかよ! 屈辱だった。ワルキにとって、屈辱と表現する以外に何があるのだろうか。 初歩的なミスはする、簡単なトラップには引っかかる。陳腐な使い古された手に乗ってしまう。 毒鏃なんて、古風な物が未だに存在していることが驚きなのだ。 畜生、ちくしょう、チクショウ! こんなところで下らない死に方をするのだろうか。 小さな子供一人守れないのか……。 自分の非力を呪う。呪うしか出来ない。 ワルキの首の真上から、ギラリと剣が光る。 そうしてそれは無慈悲に振り下ろされる。 ワルキの首めがけて、一直線に。 ぎゅっと目を瞑る。 その前に風を切る音が聞こえる。ヒュン、と。 「ぐっ」男のうめき声。 何事かと思い、目を開いて状況を確認する。 剣を持っていた男の腕に刺さっていたのは一本の矢。 「誰だ!」叫ぶ間に矢は男の四肢を打ち抜く。 正確無比にして、非情なる弓矢はただただ貫くだけだ。 その場に跪く男。流石に、両腕両足を射られて平気な訳も無い。 「その子と彼をおいて、今すぐに去りなさい」 凛とした声が響く。何処から声がするのかは分からない。 おそらく、魔法で声を反射させているのだろう。音で自分が何処にいるのか判断させないために。 その為に、全く違う方向から四肢を射抜いたのだろう。魔法の矢の特性を利用して。 「聞こえなかったの? 今すぐに去りなさい。二人をおいて」 幾らか逡巡する男達。敵が何処にいるのか、確かめているのだろう。 「時間稼ぎは無駄。稼げば稼ぐ程に、貴方達は深みにはまるだけ」 聞こえると同時にまた、矢が足元に突き刺さる。 忌々しげに舌打ちをすると、リーダーらしき男は指示を出す。 ジェンを持っていた男は、彼をそのまま放り捨てた。 「行くぞ」顔を憎々しげに歪ませながら、男達は立ち去っていく。
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