国を統べるには

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ジェンを守ることには成功した。 だったら一体なんだっていうのだ。あの夢の正体は。まるで誰かが、訴えかけるような、そんな感覚さえもあった。 ジェンの危機はひとまずは回避された。一度危険と分かってしまえば、過度に警戒しない程、この学校の生徒は甘くない。 だとしたら、何だ? 警戒はない。安心もした。だと言うのに、何だ。この言い表せない不安感は。 ワルキは思い込みが激しいほうではない。 小賢しい事を考えたくないだけ。つまりは単純なのだ。単純ゆえに、馬鹿と思われる。 考えれば考えるだけ、自分がどうかなってしまいそうだったから。 「……予知夢? まさかな」 下らない考えを払うように、蛇口を閉める。体を拭き、着替えてからシャワールームを出た。 とにかく、そんなことはどうでも良い。対策を考えなくてはならない。 「なぁ、ヘル。襲ってきた連中、獣人みたいだったんだが」 開口一番に、ワルキはそう尋ねた。 それを聞くと、にやりと口端を吊り上げて笑うヘル。 「ほう、案外目は悪くないみたいだな。確かに、あいつらは獣人だ」 「おかしくは無いか? 何で獣人がこいつを狙うんだ」 「……さてな。奴隷商人か何かか」 肩を竦めながらそういうヘル。 「おかしくないか? ただの奴隷商人にしては、子供一人に対して執着しすぎの気がするんだが」 確かに、逃げた奴隷を捕まえるだけにしては数が多すぎた気がする。 「確かにな。子供は高く売れるとしても、あそこまでの戦力や労力を割くとは思えない」 「だろ? だったら……」 「それだけ金になるか、それとも……」 不敵な笑みを浮かべて彼女はジェンを見る。薄々は感づいているような風だ。 「まぁ、答えはもう少しで出るかもしれんがな」 彼女はそう言って、笑った。
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