国を統べるには

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だが、確かに。 ジェンが王家の人間であるのならば尚更ここにはおいてはいけない。 相応の場所、というものがあるのだ。 「それでは、参りましょうか」 崩天はそういうと、その小さな手をとった。 だがしかし、彼の手を力一杯払って、ワルキの服を握るジェン。 絶対に彼からは離れたくない、という意思表示だろう。 それを見た崩天はため息を吐いた。まるでそうなるのが分かっていたかのように。 「随分と気に入られたものだな。少年。お前も付いて来い」 何の造作も無く彼はそういった。別に、予想していたことなのだろう。 王宮に招く人数を増やすなんて、どうかしている。 「ついでだ。ピアナも呼んでおけ。あのお嬢ちゃんにも、懐いている話だしな」 彼はそういうと、腰を下ろした。 ピアナが来るまで、待っていようという魂胆なのだろう。 溜息を吐くとヘルは茶を淹れる。別に特別なものではない。普通にそこらで売っている安物だ。 殆ど反射みたいなものだ。 「どうした、早く呼びに行けファイ」 「やっぱり俺なんですか」 「文句を言うな。命令だ、さっさといけ」 まったく、いつもこんな使われ方なんだから、と愚痴を漏らしながらも、彼はゆっくりとワルキの部屋を出て行った。 「最近どうだ、ヘル」 崩天は美女に向かってそう尋ねる。 「子守を頼まれてとても大変ですわ。とんでもない主人を持つと苦労しますわ」 ここぞとばかりに皮肉を言ってやる。 「私だって忙しいのです。少しは自分の時間というものがですね」 「あーこんど本人に言っておく」 煩わしそうに崩天は顔を背けながら言った。随分と耳が痛い。 何せ本人なのだから。
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