国を統べるには

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本人を前にして物怖じしない辺りは大分慣れている、といったところか。 おそらく、ファイも似た風になっているのだろう。 随分としたたかになったもんだ。 「……所で、リオンは?」 ワルキは本人に向かってそう尋ねる。それの可笑しさと言ったら、ヘルが一瞬吹き出しかけたほどだ。 なにせ本人なんだから。 ロウが「何か」を言いかけたが、しっかりとヘルがサイレントの魔法を使用して喋らせなかった。 子供と言うのは無邪気なものだ。それが時に秘め事を暴く事もある。 「あいつなら、まだ内偵に行かせているが」 「内偵? 何でそんなことをさせる必要性が……」 「詳しいことはまた後で話す。お前の力を借りる事が前提になりそうだしな」 そういって茶をすする。 いかんせん、なんとも現実離れした光景だ。黒いローブを着た男が、湯飲みから茶をすすっているなんて。 しかもそれがギルド最強の男だというのだ。一切の素性を明かさず、その正体は不明のまま。 そんな男が目の前で、のんびりと茶をすすって座っている。 非現実的といわずして何と言う。 「……おじさんは……」 ワルキの服を掴んだまま、じっと動かなかったジェンが口を開いた。 「おじさんは……何人……人を殺した、の?」 あまりに唐突な質問。 そして、不躾で無礼なものだ。 「おいおい、俺は最近人を殺してないぞ」 苦笑しているのだろうか、肩を揺らしながら崩天は言った。随分と妙なところに食いつく子供だ、と思いながら。
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