国を統べるには

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「さて、ではそろそろ参りましょうか」 崩天のルシフェルはそういうと、不意に立ち上がる。 言葉遣いも変わったということは、仕事モードに切り替えた、ということなのだろう。 とはいっても、ファイもピアナも居ないのに。 疑問を口にしようとした、その時。 「ただ今戻りました」 ファイとピアナが扉を開けて現れたのだ。 驚愕に目を見開くワルキを見て、にやりと笑う崩天。随分、悪戯が好きなんだろう。 「来て早速だが、王宮へと向かうぞ」 「は? 王宮?」 目を丸くして驚いているピアナ。 「説明しておけよ」 「五月蝿いです。俺だって事態の把握が出来ていのに、どう説明しろと」 「……簡単だろ」 「文句ならリオン様に言って下さいな。あの人のせいですから」 「…………」 正体を明かすことが出来ない以上、沈黙するしかない。 「あの、宜しいでしょうか」 微妙な空気が流れる中、ピアナがおずおずと発言する。 「なんだい、ピアニシモ」 「本名で呼ぶの止めてください」 「分かった分かった。分かったから、にらまないでくれ。ついでに、後ろにこっそり隠れてついて来たお嬢ちゃんも出てきなさい」 その言葉で、一斉にファイとピアナが背後を振り返り、警戒する。 「……まさか、貴方だったとは」 スゥ、と音も無く現れたのはピアナの主、カレナだった。 流石はギルドランクA。この位の隠密行動はお手のものということか。 「ファイをピアナに差し向ければ、嫌でも現れると思っていたよ」 「……その時点でお見通し、って訳ですか」 最早賛辞の言葉すら、思い浮かばない。こんな格の違う相手に賛辞を送られても嬉しくは無いだろう。 というのも、カレナの勝手な誤解であって、本人はとてもお調子者なので、ほめられたらその分調子に乗るのだ。 「それに、従者を借りるのには主人の許可が要るだろう。その分同行してもらえれば、手間が省けると言うものだ」
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