国を統べるには

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学生達からの視線がものすごい。 黒衣の男を筆頭に犬耳をつけた子供やメイドや狼が歩いているのだから、それは当然だ。 すれ違う生徒達の表情はどれも驚愕ばかり。そりゃあ、崩天のルシフェルがいるのかと思っているのだから。 黒衣のローブを着ていて顔を隠している人物が通路を闊歩しているとなれば、否が応でも注目せざるを得ないだろう。 しかも素晴らしいまでの存在感を放っているのだから、注目が無いほうがおかしな話だ。 それより、誰かが通報していないかが心配である。 玄関を出て、少し歩くと崩天は立ち止まった。 「この辺で良いか」 彼はそういうと、背後にいたワルキたちを振り返る。 「その場で、絶対に、動かないで」 すぅ、と崩天は手を頭上に掲げて何かを宣言し始めた。何を言っているのかは、ファイにも理解が出来ない。 ヘルには理解が及ぶ範疇の話だが、こんな面倒な魔法を使用するなんて。 信じられない。 「座標指定……絶対値固定……T09インクレメンタルG91……G00X00Y00Z00……クーラントM08……G01……座標固定……Fライトヴェロシティ……補正G43H……M5M9……M30……ゲート固着」 長ったらしい詠唱らしき言葉を呟くと、足元に魔方陣が現れる。 成程、これを展開するための詠唱だったらしい。 「さぁ、参りましょうか。王子様」 その言葉が発せられると同時に、ファイ達の体が光に包まれる。 どうやらこれは転移魔方陣らしい。 流石は崩天のルシフェル。 転移魔法なんていう、高等な魔法をこうもあっさりと使用するとは。 おそらく向かう先は王宮だろう。となれば距離もそれなりのものになる。 それだけ大きな魔力を有しているということだろう。 数瞬の後に、目に入ってきたのは豪華絢爛な内装。 きらびやかなシャンデリアや、様々な装飾品。 足元には赤いカーペットが敷かれている。 何よりも、少年たちを驚かせたのは目の前にいる人物のことであった。
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