国を統べるには

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全く相変わらずだ、と溜息を吐く。 やはり敬意を示しているのは表面上だけであって、内心では面白くないのだろう。 「貴方をあのような無用心な場所へご宿泊させるわけには行きませんからな。特に今は」 「……僕の正体を知っている、と言う事は当然ですか」 「ええ。報告によると、襲われたそうですな。そのようなことがあっては、なりませんから」 「……僕をかくまうということはどういう事か、分かっているのでしょうか」 「無論ですとも。貴方がどうしてここにいるのかも、察している心算です」 「……貴方の目的は、一体何なんですか?」 「当然貴方と友好関係を築くことにありますよ」 「この場合『僕と』とではなく『僕の国と』と言い換えるべきだね」 「あはは、確かに。君と仲良くなるという事は、すなわち君の国と仲良くなることになるな。尤も、それが目的であるのも間違いではないのだが」 けらけらと笑う王。 「知っての通り我が国は私の父、前王の時代に他国との交友が一切無くなった。それを回復させたかったんだが……色々とこちらも忙しくてね」 そこで彼は再び崩天を見る。 「今まで友好関係を築き上げる事が出来なかったんだ。そこでこれを機に友好関係を再び築き上げたいと思ってな」 「……獣人を神に仇なす悪魔とした国と、再び友好関係を作れるとでも?」 「それは前時代の話です。私達は友好的な関係を結びたいと思っている。当然反対意見も出るだろうが、私個人の意見としてはそうだ」 「それで、内戦中の国の王子を使うということですか」 「こちらも事情は把握していますよ。一方的な私欲のみの革命である事くらいは」 「……そうですか。全て知っている上で、僕にそういうのですか」 「此方には優秀な調査員がいますから」
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