国を統べるには

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後に残されたのはファイとカレナの二人。 王の御前であるので、二人とも顔を伏せたままだ。 「さて、ファイ君と……カレナちゃん、だったかな。君たちにはきちんと礼を言っておかなくては」 礼? カレナとファイは顔を見合わせる。何に対して礼を言うのだろうか? 「娘の危機を救ってくれて、本当にありがとう」 「い、いえ! 姫様をお救いするのは私たちの義務といっても良いもの! お礼を言われるような事では!」 カレナは頭を上げて、そういう。 「確かに、王であるのならそう言うべきだろう。特に前の王なら、そういったに違いない。だが、私は一人の父親なのだ。父親として、娘の恩人に礼を言うのは当たり前だろう?」 確かにそうだが……。本人達も、随分と忘れていたのだ。 一学期にこの国の姫、アンジェリクはユーレリウル学園に転校してきた。 ところが何の因果か、誘拐されてしまったのだ。お姫様というのは、常に攫われるという呪いでもかかっているかのように。 全く難儀なことだ。 そこで何を思いついたのか、カレナとファイが助け出す算段を立て始めたのだ。尤も、その時点でお姫様であるということが分かってたのだが。 いやいや、何にせよ大人に任せておけば良いものを、過信してか居場所まで強引に割り出して助けだしたは良かった。 良かったのだが……割と誘拐された人数が多かった所為か、脱出に手間取ってしまって、追い詰められた。 結果、生命を張ることになったのだが……崩天のルシフェルが助けに来てくれたお陰で、何とか事なきを得た。 ついでにクロノも来ていたが。 つまりは、別にファイ達が行動しなくとも崩天が勝手に解決してくれた、という事で。 ファイとカレナはただ単に状況を混乱させたに過ぎなかったのだ。
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