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思い切り蕩けているカレナの瞳に気づいた王は、少し危険を感じたのか指示を出す。
何と言うか、こう、長年の付き合いをしていたから分かるような、そんな危機感だ。
つくづく、似ていると思う。
「まぁ、ともかくだ。二人とも、こいつが部屋に案内するから」
親指でリオンを示してみせる。
「俺を小間使いにするなんて、貴様も偉くなったもんだな」溜息を吐くと彼は背を向ける。「ほらこっちだ、ついて来い」
納得は出来ないファイであったが、ここはおとなしく従っておくことにした。
相変わらず今にも噛み付きそうな目つきをしている。が、それを見ているカレナは、頬を染めてはぁはぁしている。
変態だ。
しかし、それにしても似ている。
本当に、昔とそっくりだった。少し暖かな気持ちを思い出しながら、彼らを見送るのであった。
部屋まで案内されたワルキは、少しばかり戸惑っていた。
王宮の部屋、といってもそこまで大した部屋に案内されるとは思っていなかったのだが……。
正直、甘かった。
何がか? 当然、ワルキの想像がだ。
「……予想の上を行くってのはまさにこの事だわ」
唖然とした表情のまま、ワルキは呟いた。
「この部屋は客人用の物ですわ。それなりのものでなくては」
その呟きに反応する。
確かに客人をもてなす為の部屋なのだから、質素であってはならない。
快適に過ごしてもらえるように、それなりに豪勢に作らなければならないだろう。
だが、庶民であるワルキにはこの部屋は少し落ち着かない。
流石に豪勢過ぎるのだ。
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