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無理も無い。今までどれだけ狭い部屋の中で生活をしてきたことか。
学校の寮ですら、広いと感じるほどだ。決して広い筈は無いあの部屋でも、広いと感じているのだから。
「気にすることは無いわ……やっぱりこれね」
彼女はそういうと、明らかに何らかの扉らしきものを開いた。
木目調のそれは、一見すると小さな引き出しのようにも見えるが、実は小型の冷蔵庫だったのだ。
というか、こんなものにまでこだわるとは。
細部まで金をかけている。
「飲み物は入っているわ。ジェン、炭酸が良い? 果物が良い?」
ピアナは冷蔵庫の中身を物色しながら、ジェンに尋ねる。
「えっと、食事前なので果物ジュースを」
「オレンジ、アップル、グレープがあるけどどれが良い?」
「グレープが好きです」
「グレープね」彼女はひとつのボトルを取り出すと、手際よく栓を開ける。
そして、テーブルの上にあったグラスの一つにそれを注いだ。
「結構な高級品ね、これ」
彼女がうなるようにボトルを見ていった。
やはりどんなものにも高級品というものは存在しているらしい。百パーセントジュースは百パーセントジュースのままだと思っていた。
「で、だ。ジェンお前が獣人の王子様ってのは本当なのか?」
テーブルに腰掛けながら、ワルキは尋ねる。自分のグラスにジュースを注ぎながら。
「はい……今まで黙っててごめんなさい」
「まぁ、今更だけどさ。知ってるか? さっきのお姫様、俺たちの学校に来てたんだぜ。身分偽ってさ」
「あの人がですか?」
「まぁ、俺の周りにはまともな連中がいないから余計だしな」
「まともじゃない? って、どういう事?」
小首を傾げるしぐさをする。
「俺は生まれも育ちもただの平民だぜ。でもな、ファイは英雄の息子だし、リオンは崩天の弟子だし、カレナは有名な貴族だし、ピアナはメイドやってるけど、元は貴族だし」
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