国を統べるには

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最初の頃の無口さはどこへやら。 王様と対面して以降、やたらと流暢に話すようになっていた。 というか、使用されている言語が共通のものであったのか、と今更ながら気づいたワルキである。 「そういえば、あの人はお前の国ではどういう風に言われているんだ?」 ふと、疑問に思ったことを尋ねてみる。 随分と彼は崩天のルシフェルを毛嫌いしていた風だったから。 「僕の国では、白い羽を持った悪魔、僕たちを殺しつくす為の兵器とか教えられていました」 「何でそんな風に教えられてたんだ? 俺たちの所とはまるで対照的じゃないか」 ワルキが目を丸くしながら言うと、ピアナが横から口を挟む。 「こっちから見たら英雄でも、殺されたほうからしてみれば、ただの人殺しよ」 その通りである。だがしかし、そこでまた疑問が出てくる。 「でも、実際に戦争をした事はないじゃないか」 「よくよく考えてごらんなさい。時代を遡れば、この国は獣人排斥の思想が強かったのよ? それに戦争が終わって十五年。まともに考えれば、ようやく情報が行き交い始める頃。政治も内政ばかりではなく、外交に本腰を入れ始める頃よ」 戦後は随分と酷い有様だったらしいから、とピアナは言う。 確かに戦後は凄惨たる有様だった。 幾ら戦争に勝ったとは言っても、敗戦直前だったのだ。被害は甚大、なんて物じゃない。 僅か十五年程度でここまで持ち直したのは、雨後のたけのこなんて話じゃない。 何せ、この辺りは焼け野原だったという話だったでは無いか。 「僕たちの国は五年ほど前から不安定になっていました」
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