訪れる未来の女神

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「企む、ねぇ……」 遠い目をして、その言葉を反芻する。 企む、と言うほどでもないが、遊び心程度のものは持っている。 それがギルドの根幹を揺るがすものであるとは考えられない。 そもそも、そんな大仰な事はする気はない。 余り事を大きく構え過ぎても、面倒な事になるだけだ。 「そんな大層なもんじゃないがな。お前さんがわざわざ出張ってくる様な事は起きる事も無いだろうし、俺がやる訳も無いからなぁ……」 「本当?」 「いや、聞かれても。こっちとしても、スクルドが出て来て困っていたんだ」 「なぜ」 「そりゃ、なるべく平凡な学生生活を送るつもりだったんだから」 この言葉を聞いたファイは、嘘だ、と叫びたい衝動にかられる。 ファイにとっての平凡な学園生活とは、程遠すぎる。 もっとのんびりと、普通の学生らしい生活が、ファイにとっての平凡だ。 やれやれ、この分では到底普通の生活には戻れないらしい。 中等部時代が懐かしい。 がっくりと肩を落とすファイの背中を、優しく叩いていたわるワルキ。 激しく同情しているのだろう。 しかし、あまりにも哀れだ。 「そう。なら、私からは干渉しないわ。貴方が騒動を起こさない限りね」 「起こさない、ってかお前さんが出張ってくる事は無いだろ。どうせ、あいつらもそのつもりで寄越したんだろうし」 「……どういう事」 「いんや。特に深い意味は無い。お前さんは失った学生生活を楽しめばいいさ」 運ばれてきた料理を口に運びながら、リオンはその言葉を口にする。 「私が、学校に通った事が無いって、なぜ知っているの」 つくづく、不可解な男だ。 ギルドランクは最低、だというのにギルド上層部しか知らない情報を持ちえている。 一体どれほどの底を持っているのだろうか? あの時に感じた殺気から察すると、どうも形式や数字上の強さは彼には当てはまらないらしい。 通常、ギルドランクだけでもそれなりの実力を把握する事は可能だ。 可能ではあるが、若干の誤差があったりもするので、実際に手合わせをしたりする事によってわかる。 が、このリオンだけはどうもそう言ったものとは、かけ離れた次元に居る存在のようだ。 ファイ達のクラス担任のように。
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