国を統べるには

35/43
前へ
/617ページ
次へ
成程ね、とワルキは首を縦に何度か振る。 しかし、ここまでこの子が逃げてきたという事は、つまり……。 「言っておきますが、王様は既に殺された訳でも無いと思うわよ」 ワルキの思考を先読みしたかの様に、ピアナはそうはっきりと言った。 ただ、それだけだった。 それ以上は何も言おうとはしなかった。 「ああ、そう、だよな」 ジェンの悲しげな表情をしているのを見て、ワルキはぼんやりと呟いた。 「ジェン、良い? これから貴方には辛い事が多く起こるかもしれない。でもね、私たちが護ってあげるから、大丈夫だから」 凛、と。 そう言った彼女の瞳の中には、泣きじゃくる一人の少女が、泣いているにも関わらず、瞳は憎しみに見開かれた一人の少女が。 「うん、ありがとう。ピアナさん」 「これくらいの事は、お嬢様の従者として当然ですわ」 何と言うか、女は強いな、と純粋に感じたワルキであった。 そして、少年もあんな失態は、カッコ悪い所は二度と見せない、と。 そう自分自身に誓うのであった。
/617ページ

最初のコメントを投稿しよう!

7442人が本棚に入れています
本棚に追加