国を統べるには

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気さくにそういうのは王だった。というか王がここまで庶民的で良いのだろうか? まぁ、そこそこ親しみやすいほうが国民には人気が出るだろうが。 「お前は威厳というものを少しは持て。一国を統べる王だろうに」 崩天が横からたしなめる。だが、やっぱり一国の王に対しての言葉遣いではない。 「まぁまぁ、宜しいじゃないですか。こんな人なんですよ」 そう言うのは王妃様。優雅で気品のある女性、といえばなんとなく想像はつくだろうか? 美人なのだが、ワルキが今まで見てきた美女とは異なる。 ヘルは刺々しい美しさなのだが、王妃様は柔らかな美しさなのだ。薔薇と百合の様であう。 「お前もよくこんな男と一緒になる気になったな」 まるで溜息を吐くように肩を動かしながら、崩天はそういった。 「あら、私はこういう人だから一緒になろうと思ったんですよ?」 「そうかい。お前さんが良いなら良いんだがな。お前もまた気位の高い人間だったしな」 「あら、そんな昔の事。もう忘れましたわ」 「それ以前に、お前平民どころか貧民の生まれだろ」 衝撃の新事実。 「……初めて聞きました。そんな話は」 もう呆れるしかない風にファイは呟く。額にフォークの柄を置くしぐさをする。 「あら、公表するにはあまりに早い内容ですから。それよりも、あの人は本当に何も教えていないのですね」 「……父さんですか。まぁ、知りたいとも思いませんでしたから」 「あら、貴方のお母様についても、かしら?」 「……母さんは死にました。もう、居ないんです。そんな人の話を聞いて、どうしろというのですか」 「あら、中々ドライですのね。普通は自分の母親のことくらいは知りたいと思うのですが」 「これから人の生き死にに関わるのに、このくらいクールじゃないといけないんじゃないですか?」 「あらあら、そんな強がりを言っちゃって可愛い」
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