訪れる未来の女神

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実力が最早数値で表す事の出来ない、少年の姿をした天使の名を持つ人間は、笑う。 「さて、ねぇ。一つだけ言える事があるとするのなら、俺は全てを見通しているから、かな? 地獄耳、と言ってもいいかもしれない」 「それがどう関係しているというの?」 「壁に耳あり障子に目ありって事さ」 くつくつ、と喉を鳴らして愉快そうに嗤うリオン。 その笑い声に、思わずびくりと反応してしまうファイ。 本当にリオンは千里眼だ。 物陰に居ても、気配だけで見抜かれてしまう。 例えそれが人ごみであってもだ。 それに広域探査魔法すらも操る。 リオン自身が生きたレーダーとなるのだ。 「そう、怖いわね」 「そうそう。怖いんだぜ。だけど、必要な情報を与えて、ばれるかばれないかの境界線を、俺は楽しむけどな」 「まるで探偵と怪盗みたいな関係ね」 「俺は怪盗役だな。くっく、やっぱり驚く姿を見るのは、面白いからな」 「でも、私は嫌いね。自身の正体を護るためなら、他者を殺す事も厭わないなんて」 「俺はそんなことしないぜ? 出しているのは、知れても良い許容範囲の奴らばかりだからな」 肩をすくめて言うリオン。 全くかれこれ半年近く付き合っているのに、相変わらず考えの読めない人物だ。
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