国を統べるには

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王子様は亡命しているに等しい。 ただ、逃げてきた。 いや、逃されたと推測するのが正しいか。 「……少なくとも、リオンは介入させる。自分の領域に手を出されて黙っていられるか」 崩天は食事を続けながらそういった。 まぁ、確かに。目の前で困っている子供が居るのに、手も差し伸べられないとなると、少し後ろめたい。 「……貴方も俺の性格が分かってきたんですね」 「お前達が底なしの好奇心を持っていることくらいな」 鼻を鳴らしてそういった。 「だけど、そんなことをすれば外交問題が……」 ジェンが不安そうに呟く。 だが王は、男の子に向かって笑った。 「子供がそんな事を気にするものでもないぞ。素直になっていれば良い。お父さんとお母さん、あと妹に会いたくないのか?」 妹、という単語を聞いた瞬間にジェンの体が反応した。 「ほうら、会いたいんだろう? だったら良いさ。気にするな。おじさんたちは正義の味方なんだからな!」 胸を張ってそういう王様。 リオンもあれだが、彼も随分頭がきているらしい。言ってて恥ずかしくならないんだろうか? 「セイギノ……ミカタ……」 その言葉に目を輝かせるジェン。まだまだ子供だから仕方ないんだろう。 同時にロウが「かっこいー!」と言ったのはいうまでも無いことだ。 なんだかんだで、子供っていうのは正義の味方が大好きなのだ。 誰でも一度は戦隊ヒーローに憧れた事はあるだろう。 「正義の味方か。随分懐かしい言葉ですね」 「そうか? キリエに教わってから随分と使っているんだが」 「……その言葉にどれだけ救われたことか」 「彼女はただ、正義の味方で在りたかったんだ。彼女の考えは理解できる」 でも現実はそうは行かなかったな、と王は呟いた。 王と妃はただ、何処か懐かしい瞳をしてジェンとロウを眺めるのであった。
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