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「確かに、ユーレリウルといえば名門と名高い学校だ。だが、そんな所にいるだけの子供を戦いに駆り出すのは些か気が進まない」
これはブラックマン大尉が言った台詞だ。
彼の言い分は尤もだ。
特に大尉は、能力主義者でもある。とはいっても、軍においては、の話だが。
軍においては生命を護れるかどうかが問題となる。
どうせ無駄死にするくらいなら最初から、軍にいないほうがましだ。
それに、有能なものが無能な者に押しつぶされているようでは、軍はどんどんと腐敗してしまい、只の権力闘争の道具に成り下がってしまう。
それを嫌っているが故に、彼は能力主義なのだ。
となれば、只の学生であるワルキ達の実力などたかが知れている。
強さは殺さないと判断した上での強さ。
その程度に過ぎないのに、五人も同行させるのは荷物以外の何物でもないだろう。
「あら、私をご存知ありませんか? 大尉」
「……ユエルアのじゃじゃ馬娘ですか」
挑戦的だったのは、カレナだ。
彼女も一応は既に人を殺している。何人も。
「……確かにお前は良いだろう。だが、他の連中はどうだ? 生命を捨てるだけの覚悟はあるのか?」
「あら、心外ですね。ここにいるみんなが、そのくらいの覚悟を持っているに決まっているじゃないですか」
「ま、今まで死に掛けた事は何度もあったしなぁ」憂鬱に呟くのはファイ。
「お嬢様の為でしたら例え地獄の果てでも」従順なピアナ。
「乗りかかった船だしな」ニカッと笑うのはワルキ。
だが肝心のリオンだけは「やーだね」と言って、舌を出す。
全く空気を読まない。
「生命何ざかけたって幾らになって返って来る訳でも無し。そんな物クソ喰らえだっての」
鼻で笑ってそういう。
当然、軍人達の表情は険しくなる一方だが、誰一人として怒鳴りはしなかった。
懐が深いのか、それとも慣れているのか?
「だからよぉ。生きて帰ってくるんじゃねぇか。下ったらねぇモンに生命かけるくらいなら、みんなで生きて帰ってきて酒でも飲んだほうが楽しいだろ」
リオンのそのくさい台詞に、ブラックマンはニヤリとわらった。
「確かにな。お前は面白い事を言う。名前は?」
「リオン、リオン・ヒルタレンだ。まあ、大口は叩けるが実力は無いけどな」
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