7442人が本棚に入れています
本棚に追加
溜息を吐くテンペニー准尉。
「移動の手段は航空機の使用はご法度。撃ち落とされるのが関の山です。となれば陸路で行くのが正しいかと。ただし正規のルートでは、検問にかかるでしょうね」
「どうにかしろ」
この人も中々無理を言う。
「既に策はいくつかあります。国境付近まで陸路で移動、その後に国内に潜入。そのまま王宮へと向かうのが一番かと」
もっともオードソックスな提案だ。
普通ならその方法だろう。わざわざ変装をして、怪しまれる必要性は無い。
というか、まず見た目からして違うのだから、変装して通ったところで意味を成さないのだが。
「他の手段は?」
「身分を偽っての通行か、もしくは正面突破か」
いずれにしても得策ではない。
「密偵のような人はいないんですか?」
口に出してファイは尋ねた。
まぁ、隣国の内戦の状態を調べるためなら一人や二人くらい密偵がいてもおかしくは無いだろう。
対立関係にないとは言っても、友好関係を結んでいる訳ではないのだ。
相手の内情くらいは、調べるのが定石であろう。
「一応はいるのだが、彼に助力を頼むことは出来ない。只でさえ、敵の内情は混乱しているからな。危ない橋を渡らせるわけにも行かない」
「人数は?」
「そう、多く忍び込ませることが出来ると思っているか?」
質問に対して、質問で返答する准尉。
ということは多くない、つまり一人か二人といったところだろう。
「じゃあ、俺正面突破ね」
リオンが手を上げてそういう。
どうやらこれ以上の話が面倒だったらしい。
というか何故正面突破を推したのか、その理由もなんとなく分かる。
「……一応聞いておきますけど、何で正面突破が良いんでしょうか」
相変わらず眉間に皺を寄せて、うつむいたまま尋ねる。
「一々隠れていくの面倒だし」
予想通りの回答が戻ってきた。
というか、面倒だから正面突破とは、また難儀なことを考える。
最初のコメントを投稿しよう!