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「……テンペニー准尉、正面突破した際の敵戦力は?」
「ざっと考えても百は下らないかと」
准尉の口から出た数字に深く憂鬱な溜息を吐くしかない。
百だと。ふざけている。
此方の戦力は精々十数人。
それで一体どうやって対応しろというのだ。十倍の戦力相手に真正面から挑むなんて馬鹿なことは止めてもらいたい。
「無理ね。相手が出来るのは五、六人が限界よ」
「俺は一人が精一杯だ。あんなのが沢山いたら堪ったもんじゃない」
実際に獣人の戦闘を間近で見たワルキは、思い出して背筋を凍らせる。
あんな攻撃かわすだけで精一杯だ。
「安心して。あの時の連中は訓練された部隊。しかも特別な連中ですから」
「既に交戦したのか?」
「ええ、まぁ。はったりで退かせましたが、まともに戦ったら、今頃ここにはいません」
きっぱりと事実を言う。
彼女は特にそうだ。主人を護る立場にあるからこそ、絶対に平等な目線で立つ。
確かに、彼女が弓を射る事が出来たのも、相手が油断していたのと、遠距離から隠れての狙撃だったからだ。
それに相手に只ではすまない、と思い込ませることが出来たというのも大きい。
何も相手を引かせる為に、自分のほうが勝っていると見せ付ける必要性は無い、ということだ。
「ああ、連中は魔法よりもどちらかといえば体術のほうが得意だから」
リオンはさりげなくそういう。
成程、だからあれほどまでに古風な手を使っていたのか。
今となってはすべて魔法で解決する方法だ。
「とはいっても、それが正面突破をする理由にはなりませんよ」
ファイは冷たく言い放つと、口を尖らせて「ブーブー」と野次を飛ばす。
相変わらず気持ちの悪い奴だ。
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