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だがしかし、リオンの案に賛成するものが一人だけ現れた。
「俺も正面突破が良いと思う」
そういったのは大尉だった。
「待ってください! 大尉、何か策でもあるのですか」
准尉が尋ねると、自信満々に彼は答えた。
「策ならこいつが持っているだろ」
リオンを見てそういう大尉。幾らなんでもこのお気楽馬鹿が正面突破に対しての策を持っているとは思えない。
それに、身体能力が高いと言った以上、そう簡単には通してくれそうも無い。魔法がからっきし、というわけでもなさそうだし。
そもそも、リオン本人がそこまで実力を出すとは思えない。
「へっへっへ、やっぱり良い目してるね。流石は軍隊に血統主義を持ち込まない男」
意味ありげにニタァと笑うリオン。
「……あるんですか、そうですか。無いとばかり思ってましたよ」
「はっはっは、ファイ。俺が何をしていたのか言ってみろコラ」
「密偵です」
「誰の代わりに密偵してたんだコラ」
「お師匠様ですコンチクショー」
「宜しい。その上で俺が進入経路を画策していないとでも思ったかコラ」
「とっても思ってましたとも。面倒の一点張りでとりあえず門をぶち抜くのかと」
以前、本当にそれをしたことがあるから、尚更だ。
そういえばジンは何処に消えたのだろうか? という疑問がワルキ達の中で芽生えてくる。
そういえば崩天のルシフェルが入ったとかそんな話が流れて以来、結局見かけなくなった。
「まぁ、最初はそれで行くつもりだったのだけどな。そんな事やると余計面倒だろ。今回の目的はあいつの目の前までジェンを連れて行くことなんだから」
やれやれとリオンは面倒くさそうに溜息を吐く。
意外にもそういった所は考えるようになっていたらしい。馬鹿でも少しは学習するみたいだ。
「たとえ正面突破が可能だとして、一体どんなことをするんだ? 戦力の差は火を見るよりも明らかだ。それに下手をすれば戦争になりかねない」
今まで会議に参加していなかった兵の一人が質問してきた。
「俺達の国が誰も攻めてくるとは思ってないよ。だから連中は常に骨抜きだ。それに無力化もしない。あくまで隠密行動をするだけだ」
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