突破

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当の本人は素知らぬ顔で口笛を吹いている。 この男は躁鬱の気でもあるのではないだろうか、と時々ワルキは疑問に思ってしまう。 こう、何と言ったら良いか、切り替えが激しいと言うか、裏表が凄まじいとか、そういった感じだ。 当然、躁鬱とは全く異なるものであるから、その考えは間違いであるのだが、落差と言う意味合いでは似ているのかも知れない。 何せ普段はファイにケツを蹴り上げられながら、涙目になって走り回っているのに。 「そういうことだ。では、各自班に別れ、車両に乗り込め。以上!」 ブラックマン大尉がそう言うと、兵とカレナが一斉に敬礼する。 遅れてワルキやピアナ達も同様に敬礼する。勿論リオンはしてない。 敬礼から直ると、そのまま班に分かれる。 計三班、合計して十六人になる。 この人数で関を突破しようと言うのだから、中々無茶をする連中だ。 班毎に纏まると、一両の輸送車に乗り込む。 これから数時間、車に揺られながらの長旅となるだろう。 まぁ、そこそこ広いし、昼寝も出来る。 まぁ、子供が眠れる程度のスペースだが。 「さて、ここいらで進入経路の話をしておかないとな」 リオンはそういうと、何処からか大きな地図を一枚取り出した。 「これは?」 「見ての通り地図だ」 「いや、そんなの分かってますから。これは何処の地図ですかって、聞いているんです」 ファイがそう尋ねるとリオンが口を尖らせる。 「そのくらいは察せよ、これから突破する関の地図だよ」 確かに、あの前置きからではこの結論しか出ないだろう。 それにわざわざチェスのこままで用意されているのに。 「まずこの門には常に数人の見張りがいる」 広げられた地図の上にチェスの白い駒を置く。これが敵のシンボルなんだろう。
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