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闇に身を隠すように移動して行き、目的の関所が見えた場所で全員一度行進を止める。
「あれが、突破する関所、か」
ファイはそう一人呟く。どうも若干拍子抜けをしているようだ。
それもその筈。中途半端なコンクリート造りのそれは、壁に蔦が蔓延っており、それがさらに古さと薄気味悪さを誘っている。
圧倒的な威圧感、というものは一切無かった。
サーチライトもちらほらと見えるが、脅威にする程の数でもなさそうだ。
成程、正面突破したくなる気持ちも分からなくは無い。
別の意味での恐怖、といえば無い事は無いのだが、これだけ人がいるのにそんな事を気にするほうがどうかしている。
ここが誰もいないのなら、通るのは僅かに恐れるだろうが。だって怖いじゃないか。
誰もいない寂れた関所なんて。しかもここまで中途半端にきちんとたっているなんて。
モンスターとか幽霊の住処になっていそうだ。
全員の緊張が高まっている中、大尉は静かに作戦決行の意を伝える。
「それではこれより、作戦を開始する。車内で行ったブリーフィング通り、関所を突破してくれ。各員の健闘を祈る」
そういうと、彼らは散開。それぞれ別個に作戦行動を開始した。
目的は関所の突破。陥落ではない。それをくれぐれも間違えないように。
一応リオンに念を押そうかと悩むファイであったが、今回はなにやら別のたくらみがありそうな予感がしているので、おとなしく黙っておく事にした。
なんにしても面倒ごとは回避不可である。
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