突破

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彼らは出口が見えたことに関しての安心感から、そのトラップに気がつかなかった。 リオンたちの方面から抜ければ無かった代物。 本当にこの関所はいやらしい。 突破しにくいように作られていやがる。 彼らが踏んづけたのは、あまりに古い使い古された手。 紐というか、糸を踏んづける等して切れた際に音がなる例のあれである。 というか、こんなものが未だに現役だったのには驚いた。なんて考えていられる場合ではない。 踏んづけたワルキ本人は、鳴り響く警報と、次々とついていく照明に何事かと我を忘れてしまっていた。 「急げ! 逃げるぞ!」 准尉は冷静にそう声をかけて走り出す。 あまりの事態についていけないワルキだが、ピアナに腕をつかまれて我にかえる。 「見つかったのよ! 急いで逃げないと!」 彼女はそういってワルキの腕をつかんだまま走り出す。 ようやく事態が飲み込めたワルキは、背中にジェンを乗せたまま走る。 「侵入者は外部へ逃走。繰り返す侵入者は外部へ逃走。各員警戒されたし。なお、発見次第攻撃し、これを殲滅せよ」 放送でやたらと冷静な男の声が響き渡る。 准尉はそれに対して一言愚痴をもらす。 「くそっ……侵入者が何者かを確かめる気も無いってか!」 何の目的があるのか位は聞き出す必要性があるというのに、ただ殺せという命令ではあまりに横暴だ。 おそらく、自国の何者かが国外に逃走しようと企んだ、とでも思っているのだろう。 外国からわざわざ進入してくることなんて考えられない。 それに、ジェンが此方へ来たことを考えると、そのときにも何らかの騒動があったと考えてしかるべきだ。 だとすれば、サーチアンドデストロイという指示は間違いではないだろう。 サーチライトに照らされながら、ワルキたちは木陰に身を隠そうと必死になって走る。 だが彼らが身を隠すよりも先に、敵が攻撃してくる方が早かった。 距離にして数十メートル。ライフルの射程としては十分すぎる。 手近にいた、兵の所持するライフルがワルキたちめがけて放たれる。 このまま逃がすわけにもいかない上に、敵は走って逃げている。
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