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幾人かは彼の受け答えに疑問を持ちながらも、ただ黙って彼の後に続いて行く。
ともかく敵国内への侵入は成功したのだ。
後は首都へ向かい、玉座を奪還すれば良いだけ。
リオンには違う目的があるようだが。どうせ食い歩きか何かだろう。
集合場所には既にカレナたちが集まっていた。
その中に一人真っ青な顔で立ち竦んでいたジェンは、ワルキの少し疲れた顔を見ると途端に駆け出した。
「ワルキさん! 大丈夫ですか!」
目じりに涙を溜めて、必死な表情でたずねる。
「ああ、大丈夫大丈夫。ほら、元気一杯」
「でも銃に撃たれてあんなに血が流れていたじゃ無いですか!」
「あー、ほら大丈夫大丈夫。治ったからさ」
ワルキは涙と鼻水でぐちゃぐちゃのジェンの頭をわしゃわしゃと豪快になでてやる。
心地が良い訳ではない。むしろ少し痛いくらいだ。
だけど、それはジェンを安心させるのに、余りある力だった。
一方、そんな感動的な再会をしている傍らで、ファイは愚痴をひたすらにもらしていた。
「まったく、警報が鳴って指示を仰ごうかと思ってみたらいないし、一体何処に行ったのかと思っていましたよ。ヘルも返しちゃうし」
「あーあー、五月蝿い五月蝿い。文句なら俺に言わないで、ワルキに言いやがれ。あいつが変なことしなかったら、俺は行く必要性はなかったんだからな」
「何言い訳してんですか。貴方なら、この場にいても十分に対処できていたでしょうに」
「派手好きはいかんぞファイ君」
「貴方にだけは言われたくないです。とりあえず花火を打ち上げるような人に」
「きたねぇ花火だ」
「黙ってください。言ったことがあるのかも知れませんが黙ってください」
「割と綺麗なもんだぞ? 人間花火」
「……さらっとグロテスクな発言しないで下さい。オラトリオで聞いた事を思い出します」
流石にあれはグロテスクだった。
人間がただの肉塊に変わり果てるなんて、陳腐すぎる表現だが――まさにその通りだった。
あれが人間だったとは……思いたくないほどにグロテスクな姿だった。
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