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まぁ、要するに自分は死闘をせずに済みそうだ、って話だ。
あんな目に何度もあっていては、体が持たない。
少年漫画でもあるまいし、たまには自分が良い思いをしたって良いじゃないか。
「ところで、だ。お前さんのその自信は一体何処から来るのか、教えてくれないか?」
「みゅふっふ~……ゴフッ!?」
リオンの後頭部をしっかりとぶん殴っておくファイ。
何処と無く、というよりもいつもどおりの黒いオーラを纏っている。
「はいはい、少しおしゃべりが過ぎますよ。みんな疲れてんですから、用件は手短に」
リオンの頭をぎりぎりと握り締めながら、言ってやる。こういう時は握力ってのは何倍にも跳ね上がるもんだ。
「あががががいズビバあだだだぜんんふぅぅぅ」
どうやらファイのストレスも限界が近いらしい。
爆発しないうちに、何か良いガス抜きの方法を探しておかねば。
「所で、大尉」
「な、何だね」
ファイはリオンの頭を握り締めたまま、大尉に尋ねる。
「宿は何処になりますか? そろそろ移動しないと拙いと思うのですが」
「ああ、そうだな。軍曹、案内してくれ」
「は」と短く返事をすると、案内を始める軍曹。
一同は彼を先頭に歩き始めるという構図になる。
案内された先は一つの小さな宿。
少人数でとまるような、そんな宿だ。
外見はあまり綺麗とは言い難いが、贅沢は言ってられない。
「この店の主人とは既に交渉済みですので、気兼ねする必要性はありません」
どんな手段を使ったのか、気になるところだ。
まぁ、そんな野暮な事は聞かずに、一同は宿の中へ入る。
内装はそれなりに整っていた。外見の割には、手入れも行き届いており、ソファなども中々上等な代物だった。
どうやらこの店の主人は外装に金をかけるよりも、内装に金をかける人らしい。
リオンから見れば中々の好印象だ。
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