突破

31/37
前へ
/617ページ
次へ
まぁ、要するに自分は死闘をせずに済みそうだ、って話だ。 あんな目に何度もあっていては、体が持たない。 少年漫画でもあるまいし、たまには自分が良い思いをしたって良いじゃないか。 「ところで、だ。お前さんのその自信は一体何処から来るのか、教えてくれないか?」 「みゅふっふ~……ゴフッ!?」 リオンの後頭部をしっかりとぶん殴っておくファイ。 何処と無く、というよりもいつもどおりの黒いオーラを纏っている。 「はいはい、少しおしゃべりが過ぎますよ。みんな疲れてんですから、用件は手短に」 リオンの頭をぎりぎりと握り締めながら、言ってやる。こういう時は握力ってのは何倍にも跳ね上がるもんだ。 「あががががいズビバあだだだぜんんふぅぅぅ」 どうやらファイのストレスも限界が近いらしい。 爆発しないうちに、何か良いガス抜きの方法を探しておかねば。 「所で、大尉」 「な、何だね」 ファイはリオンの頭を握り締めたまま、大尉に尋ねる。 「宿は何処になりますか? そろそろ移動しないと拙いと思うのですが」 「ああ、そうだな。軍曹、案内してくれ」 「は」と短く返事をすると、案内を始める軍曹。 一同は彼を先頭に歩き始めるという構図になる。 案内された先は一つの小さな宿。 少人数でとまるような、そんな宿だ。 外見はあまり綺麗とは言い難いが、贅沢は言ってられない。 「この店の主人とは既に交渉済みですので、気兼ねする必要性はありません」 どんな手段を使ったのか、気になるところだ。 まぁ、そんな野暮な事は聞かずに、一同は宿の中へ入る。 内装はそれなりに整っていた。外見の割には、手入れも行き届いており、ソファなども中々上等な代物だった。 どうやらこの店の主人は外装に金をかけるよりも、内装に金をかける人らしい。 リオンから見れば中々の好印象だ。
/617ページ

最初のコメントを投稿しよう!

7442人が本棚に入れています
本棚に追加