7442人が本棚に入れています
本棚に追加
「いらっしゃい」
店主らしき初老の男性が、そういって話しかけてくる。
「世話になるぞ店主」
「いえいえ、金さえもらえれば、私どもは知らぬ存ぜぬが通せますので」
成程、治安が宜しくないと言ったのはコレが理由か。
確かに、金で解決するようでは、あまり治安はよろしく無いだろう。
リオンにとっては随分と都合の良い話だ。
「ところで店主、王様の処刑はいつになったか聞いているか?」
リオンは何の気無しにそれを聞いてみる。
「……明後日に決まったと」
「そりゃ楽しみだ。勿論、見物に行くんだろ?」
ずいぶん楽しげなリオンとは対照的に沈んだ雰囲気の店主。
「見に行きますとも。自分の目で確かめないと彼らが本当に死んでしまったのか」
「嬉しくないのかい?」
「冗談は止めて下さいな。あの男の正体を見抜いている奴は悲しくてしょうがない」
これまた珍妙な回答が帰ってきた。
治安の悪い地域で宿屋を営んでいるとは思えない台詞だ。
どうやら昔はこの辺り一帯もずいぶんと賑わいを見せていたらしい。
勿論、良い意味での賑わいであるが。それが革命が起きてからはどうだ。
治安は悪化し、殺人なんて日常茶飯事。あっという間に町は荒廃して行った。
その頃はこの宿もそれなりの外装をしていたらしいが、落書きなどが増え、無意味と判断した店主が内装と防犯設備に力を入れたらしい。
随分と適応能力が高いことだ。
勿論対策をとっていない連中は見事に廃業、若しくは殺され寝床にされたので仕方の無いことだといえるが。
そんなこんなであまりよろしく思っていないらしい。
その言葉に表情を暗くするジェン。
幾ら幼いとは言っても、彼に課せられた職務は、国民を護ること。
最初のコメントを投稿しよう!