訪れる未来の女神

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「ええ、まったく驚かされたわね。あいつの監視とか言っていたけど、一体なんでかしら?」 委員長の言葉にカレナはそうコメントする。 確かに、リオンの監視をする理由が見当たらない。 特段、何かのアクシデントを起こした記憶はないのだが。 「さぁ? どうせ、影で何かやらかしたに決まっているわ」 「それは無いわ。あいつは証拠を残さない性格だと思うし」 「……確かにそうね」 「でしょう? 何かの道楽ならともかく、ギルドから監視を受けるような事をするとは思えないわ」 「そうね。あいつに煮え湯を飲まされた事を忘れていたわ」 忌々しげに言う委員長。 実際、リオンは証拠を殆ど残さない。 死神をやっていた時代は、自身を恐怖の対象とする為に、黒い出で立ちで人前に姿を現して以降、けして姿を見せなかった。 崩天のルシフェルを始めてからもそうだ。 一気にギルドランクを頂上まで上り詰めると、後は自分の権限を使って情報のもみ消し。 今となっては、残っている情報など少ないだろう。 生き証人として、数人いる位だが、たとえ彼等が話したところで一般市民が信じる訳がない。 だってそうだろう? 今まであこがれ続けて来た、国の救世主様が学生だったなんて。 信じたくも無い。 本当は違うが、五百歳生きているといっても信じる訳がない。 一部の狂信的信者は信じるかもしれないが。 余程の事が無い限り、リオンの事を信じる訳がない。 因みに、ファイはこの四人に「実はリオンは崩天のルシフェルだったんだ」と言ったところで、信じないと思っている。 自分の普段の態度から、少しは考えるだろうが、信じることは無いだろう。 「ピアナはどう思うかしら?」 カレナはピアナに話を振る。 「私ですか? ええと……恐らく彼は私達の知らないところで何かをしていると思います」 「どんなこと?」 「そこまでは……でもギルドから監視をされているとなると、何らかの容疑者であるかもしれませんね」 「内部反乱って事かしら?」 何やら物騒な言葉が飛び交っている中、唐突にワルキがファイに話しかけた。 「……なぁ、ファイ」 「ああ、多分あの人は気がついていたよ。俺達がここに居て、会話を盗み聞きしていた事に」
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