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相変わらず、悪戯というかかくし芸というかそういったところが好きである。
いい加減、そういったことは止めればいいのに。
まぁ、言いたくないのは分かるが。
それに言った所で信用されないのがオチだが。
「うーん、始末系の内容も慣れているし。暗殺を主に担当してたから、こういったのは慣れてんだよねぇ」
気楽に笑って言うリオンだが、わらいながら気楽に話すことでもない。
そもそも、学生がするような話でもないはずだ。
戦時中はともかくとして、戦争から既に十五年経過し、平和になったのだ。
いや、平和であるのだ。
にも関わらず、そういった単語が学生の口から飛び出したくるのはみょうちくりんな話。
「暗殺か。あまり耳障りの良い言葉じゃないが」
別に学生の口からそれが出てくることに違和感を感じて良い無いのか、平然とそう呟く。
「お言葉だが、一番暗殺ってのが綺麗な殺し方なんだぜ?」
最も汚い殺し方に聞こえるが。
「俺にとっての暗殺ってのは、ターゲット以外を殺さない事だ。つまり余計な死者を出さない事を信条としているんでね」
「だが、そいつは護衛たちに対しての無礼となる。そして慕っていた人間達は、卑怯と罵り、報復に出る」
「そいつが人間の限界ってもんさ。俺がお師匠様に弟子入りしてからヒトってもんを見てきたが、そう大して高尚な生物でも無かったよ。あるのは嘘と矛盾、自己満足と自己陶酔。信念や正義なんて何処にも無かったね」
「自分という存在を殺されなかっただけましと」
「そうだぜ? 死んじまったらどうしようもない。死とは敗北の事。そこに正義も悪も無い。ただ結果だけが残るんだぜ」
「確かにそうだな。俺達が暇なのが良いことなんだが……」
「そいつが正しい。あんた達が暇であるのが本来の世界の姿だ。同族殺しなんて下らない。共食いを愚かというのなら、人間もそうである事に気がつかなければならない。つっても気がつかないまんまなんだがな」
苦笑とも嘲笑とも取れる乾いた笑い声を上げるリオン。
それは視て来たから言えるだからこそいえる言葉なのだろうか。
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