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ぶつくさ文句を言うリオンであったが、ファイの一睨みで沈黙することとなった。
本当に崩天の弟子なのかいよいよ怪しい。
といっても、リオンとファイの関係はあくまでも兄弟弟子なので、別に不自然というわけでもないといえば無い。
まぁ、それでも不自然といえば不自然なのだが。
「ともかく、王子様を安全なところに置いといて、自分達が攻め込むって案は正しい。それが一番安全で確実な案だろうな。そのほかの戦略はともかくとして、だ」
ここで一呼吸を置くと、リオンは話を続ける。
「だけどな、それじゃ隣国からの干渉って事になってしまう。自分は安全な所に居て、勝手に隣の国の人間が悪政をぶちのめしたんじゃ、意味が無い。分かるだろ。あくまで「王子様が」ぶちのめした体を装わなくてはならないんだよ。人間ってのはバカだからな」
ビシ、とワルキに指をつきつけて言う。
「お前、王の武器たるものは何だか言えるか?」
「は……?」
唐突のことに答えられないワルキ。当然だ。
王様の武器なんて、考えたことも無い。
「王の武器は、臣下。自国の民。自らを慕う人間そのもの」
ワルキの代わりに返答したのは、大尉だった。
「ご名答。人が居なくては、それは国ではない」
リオンは片目を瞑りながら笑顔で居う。
なるほど、そういう事か。
ここでようやくリオンの意図が理解できた。
確かに、殺すのは簡単だ。何せ人間は数グラムの鉛をぶち込まれて死んでしまうのだから。
問題はそのあとだ。
殺した後、王国を取り戻した後、民が王についてくるのか。
一度は敗北した王が。
それでは意味が無いのだ。
王は強くなくてはならない。
いや、只単純に強くなくてはならない、といえば御幣がある。
確かに腕っ節も強く在るべきだが、何よりも精神面で強かでなければならない。
キレなければ意味が無いのだ。
その意図が理解できてしまった以上は、黙るしかない。
沈黙。
苦々しい回答。静寂を以ってして、この案は可決された。
後の細かい打ち合わせは軍人達が行った。
彼らもプロだ。
やるとなったら、最悪の状況を最良の状況に変えてみせる。
自分達に当てられた任務には忠実でなければならない。
作戦は決定された。
後は賽が投げられるのを待つだけ。
賽の目はいったい何を示すのか。
最良か、最悪か。
それを決定するのは、神でもなんでもない。
ただの人間だ。
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