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その日、城の広場は大勢の人間で埋め尽くされていた。
群集のその視線の先にはギロチンに拘束された男女が居る。
彼らの上には鈍く輝く刃、そして周囲には軽装の鎧を身に纏った兵士達が整列している。
その表情は様々だ。
平然としている者や、少しばかりおどおどしている者、ニタニタと笑みの隠せていない者など、実に様々だ。
城のエントランスには豪勢な玉座がすえられていた。
何故か二人分ほど座れそうなほどに巨大な玉座は、様々な宝石や貴金属で装飾されている。
……何故、あんなにセンスがいいんだろうか。
中途半端に派手なのではなく、だからといってギンギラギンに輝いているわけでもない。
正直、センスが良い。
阿呆な成金貴族よりも随分センスが良い。
やっぱり、そこは王と貴族の差という奴だろうか。
何と言うか、センスの違いからして大物なのか、小物なのかが分かってしまうのも考え物だ。
とまぁ、そんな玉座にはまだ誰も居らず、空席となったままである。
公開処刑の時間が刻一刻と迫っている中、フードを被った一人の子供が不安げに処刑台を見上げていた。
国民もまた、不安げな表情だった。
この国で反乱を起こした軍人、ケーニッヒ・ハルトマン元帥。
彼はその圧倒的指導力と利己主義的思想を以ってして、軍人を初めとする有力者達を次々と自分の勢力へと取り込んでいった。
凄まじいまでのカリスマを発揮し、城を占拠し、王を玉座から引き摺り下ろした。
その豪腕な手法は、政治にも現れる。
つまり、格上のものは弱者から略奪しても良い、というものだ。
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