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強者は弱者から略奪を繰り返す。
つまり、強者にとって都合の良すぎる事だ。
反逆を許さず、自分達だけが強者として君臨する。
人間なんて所詮は利己主義なもの。自分の利益になれば、他人なんてどうだって良い。
特に利己主義にして欲望の塊というに相応しい連中にとっては嬉しいばかりのことだろう。
色も、金も、その権力にものをいわせれば手に入るのだから。
手に入らないものなんて無い。
故に、彼に賛同する人間があっという間に増えたのだ。
軍部では一部を除き、全員が彼の下僕と成り果てた。
従うものには隷属を、逆らうものには死を、国民に押し付けた。
止めようにもハルトマンが率いる軍はあまりに大きくなりすぎた。
互いに協力をする間も無く、引き裂かれ潰された。個人と集団では、数で勝るほうが勝利するのは当然の理。
そして、死を本能的に恐怖するのもまた当然の事。
死人に語る事など、許されない。
彼は抜け目の無い男だ。
不穏分子はすぐに排除してきた。
だが、何故今に至るまで国王を殺さなかったのか?
国王さえ死んでしまえば、国民は屈服するほか無い。希望という名の象徴を潰されるのだから。
それを承知の上で、何故彼は殺さなかったのか。
理由は二つある。
自己陶酔と演出、この二つの為だけにケーニッヒ・ハルトマンは殺さずに居たのだ。
これまでの作戦による被害など軽微、加えて次の一手でこの国の人間の心さえも手中に収めようと言う焦り。
国王と王妃を捕らえた時点で、勝利は確定していた。
しかし、ハルトマンが欲したのは完璧なる服従。
故に王子という存在は必要不可欠だった。
血筋というものに狂信的なものも居る。故に恐ろしい事も知っていた。
彼はそれを知っていたからこそ、王子であるジェンを捕らえるように命令を出したのだ。その生死を問わず。
死んでいれば、よし。死んで居なければ演出に使えるのでなおよしであった。
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