7442人が本棚に入れています
本棚に追加
完全なる絶望に歪むその面を見てみたかったのだ。良い趣味をしていると思う。
だからこそ、国王、王妃、王子の一家を揃えて処刑を行いたかった。
だが、いい加減面倒になってくる。
どうせ、年端もいかない子供一人放っておいてもさしたる問題は無いだろう。
どうせ、現れるレジスタンス風情は脆いのだ。
蟻を捻り潰す感覚に似ているだろう。
足を一本引き千切り、その挙動を愉しむ。片側の足だけ全部引き千切ったり、触覚を引き千切ったりして遊ぶ。
その場をぐるぐる回り始めたりするから、見ていて実に飽きない。
頭だけをもぎ取ってやると、下半身がぴくぴくとまだ動いているのだ。
運よく蚊を捕まえる事に成功すれば、羽だけをもぎ取ってやるなどもする。地味だが楽しい。
蜘蛛の巣にかかった羽虫を見るよりもずっと、ずっと。
予定されていた時間となり、男が姿を現した。痩身だが、非常に筋肉質な男、黒を基調とし、所々に銀をあしらった服。
軍服とも取れるが、貴族の服のようにも見て取れるそれを纏った男は悠々たる足取りで、玉座へと向かい腰を下ろす。
それと同時に側近が声を上げる。
「国民諸君、これより前国王の処刑を開始する」
高らかに、良く響く声でそう宣言した後になっがたしい口上が述べられる。
実に鬱陶しい。わざとじらしているというのが丸分かりだ。
上手くいけば、おびき出せる。そう思っているのだろう。
おそらくはそれも彼のたくらみの一つなのだろうが、今回はその企みにあえて乗るということになる。
だからこそ、綿密な作戦を立てたのだ。
尤も、リオンがいる時点で、ジェンをむざむざ殺させはしない。
ワルキもそんな事、させるものかと自分を追い詰めている。
そして、時は来た。
最初のコメントを投稿しよう!