訪れる未来の女神

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先程のリオンの言葉を思い出しながら、そう呟く。 相変わらず、隙のない人だ。 普段は隙だらけだというのに。 こういった時にだけはやたら嗅覚がよくなるのは何故だろうか。 野生の本能と言う奴なのだろうか? 全く不必要なものばかり持っているというのに、必要なものは一切持っていないのだから困ったものだ。 主に常識とか。 「いや、そうじゃなくてだな」 どうやら違ったらしい。 「だったらなんだよ」とファイは口を尖らせる。 「いや、お前あのチケットちゃんと持ってきたのかと思ってな」 ここにきて、そんな心配をするとは。 全く能天気と言うか、なんと言うか。 実はこの反応が、最も一般人らしいと言えば、確かにそうだが。 それにしたって、この状況でそんな心配をする必要があるのだろうか。 ファイがそんな初歩的なミスをする筈がないのに。 リオンだったら、面白半分でやるだろうけれども。 「持ってきているよ。そんなミスをする訳無いだろ」 小物なのか、大物なのかよく分からない。 いや、恐らくは大物なのだろう。 そうでなければ、今はリオンの事を気にしている筈だ。 ファイは無料券を見せると、席から立ち上がる。 「とにかく、帰るぞ。色々と忙しくなりそうだしな」 「そうね。私も少し話がしたいわ」 カレナも同時に立ちあがる。 これ以上ここに居ても流石に場違いな空気には耐えられない。 早々に、五人はこの場を後にするのであった。
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