狼の牙

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まともに使える人間は少ないだろう。 「まぁ、あいつも死神だし、何とかしてくれるだろ、うん」 一人そう頷くワルキであった。 「おい、バカ共! どうでも良いがさっさと撤収しやがれ! ぼやっとされているほうが面倒なんだよ!」 ハーフインチライフルを乱射しながら、リオンは叫ぶ。 というか、立ったままそれを使って肩が外れないのだろうか。しかも連射速度が異様に早すぎるし。 反動をどうやって打ち消しているのやら。 ともかく、ワルキとピアナはすぐさま二人を連れて、その場から脱出しようとする。 敵は突如として現れた勢力に対して混乱している上に、逃げ惑う市民達は最早暴徒と化しているに等しい。 これ以上の好機は無いだろう。 だが、そうは問屋がおろさない。 いち早く私兵共が逃げ道を塞ぐ。 舌打ちをして戦闘態勢に入る二人だったが、その横を二つの影が突き抜けていった。 「炎刃一刀!」 「水破!」 息もぴったりに技を放つ男女。 ファイとカレナの二人が、ワルキ達の前に立つ。 「護衛は俺達が引き継ぐから! 二人はすぐに王宮内へ」 「だが!」 「問答している時間も惜しい。早く!」 刀に炎を灯してファイは敵に突っ込む。 突破戦なら、ワルキよりも経験のある自分がやった方が良いと咄嗟に判断したのだ。 しばらくの間動けなくなるが、その代わりに身体能力を極限まで上げる『変身』もある。 最終的な突破力だけで言えば、ワルキよりもファイのほうが上になる。 あくまでもワルキが本気を出さなければ、の話だが。 「……頼む」 そういうとワルキは城内へと走る。 ぶん殴って、あんな夢をぶっ壊してやるために。
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