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遠くなるリオンの背中を見ながら、ワルキも一人城内へ突入して行った。
リオンほど華麗ではないが、何とか回避しながら彼は走っていった。
防御と一撃を加えながら進む。
城内に入ると完全にリオンを見失った。
複雑に入り組んだ道は侵入者を惑わせるためにある。
舌打ちをしながら本能にしたがって進む。
だがそんな彼の前に複数の男達が立ち塞がった。
見覚えのある姿だ。
「……お前等……!」
ギリと、奥歯をかみ締める。
苦い思い出が甦る。
こいつらだ。こいつらに、自分は敗北したのだ。
「誰かと思えば、いつぞやの餓鬼か。丁度良い、仕留め損なった餓鬼を始末するには丁度良い」
嘲笑交じりにリーダーらしき男がそういう。
ワルキはその言葉に対して何も言わなかった。
只、彼の心に在るのは、目の前にいるこの連中をぶちのめしたい。
その破壊衝動とも取れる欲求のみ。
あの夢がフラッシュバックする。
それが余計に彼の本能に火をつける。
「……お前達を、俺は赦さない」
ワルキはトンファを捨てて、素手で構える。
「お前達がジェンを殺そうって言うんなら、俺は、お前達を、ぶちのめしてやる。そいつが正しいってんなら、そんなもんぶっ壊してやる」
ワルキのその言葉に一人の男が笑った。
「やれるものなら……」
そいつは言葉を発する。おそらくはワルキに対しての挑発行為だったのだろう。
だが、その言葉が最後まで紡がれることは無かった。
たった一歩で距離をつめたワルキが顔面に拳を埋めていたのだ。
力任せに、上から下にねじ伏せるように。
何かの砕ける嫌な音が響き渡り、そいつは床にめり込んだ。
ウォォオオオォォンッ!
獣染みた咆哮が広い通路に響き渡った。
武器を捨てた事によって完全に油断していた男達は、その咆哮に怯む。
元々、ワルキは武器を使って戦うようなタイプではない。
徒手空拳こそ、彼の戦術スタイルだった。
喧嘩程度ならそれでも十分だろう。だが、それでは鎧に身を纏った兵士相手には厳しい。
だからこそ、なんらかの武装をする必要性が在った。
自らの拳を痛めない為にも。
だからこそ、最も自分の戦術にあった武器であるトンファを選択した。
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