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首や胴が切断された死体が散乱する王宮内を、まっすぐに玉座の間へと向かう。
その瞳が揺るぐことは無い。
飛び散った血痕を見ても、切り落とされた四肢を見ても、体内から飛び出した内臓を踏みつけても、恐怖の感情一つ見せない。哀れみの感情すら。
玉座の間まで辿り着くとそこには既にリオンが側近と戦闘を行っていた。
実に愉快そうに。只ひたすらに拮抗を気取って。
「来たか」リオンは横目でジェン達が現れたのを確認すると、刀を握る力を強くする。
炎を纏わせた一撃で距離をとり、ジェンの近くまで寄る。
「お待たせしました。リオンさん」
ジェンはリオンに対してそういう。少しばかり獣染みた眼は、まっすぐにケーニッヒ・ハルトマンを見据えている。
「ケーニッヒ・ハルトマン。貴方を国家反逆罪でこの場で処刑します」
幼い口から発せられる物騒な言葉。おおよそ小学生から放たれる言葉ではない。
その言葉は凛と響き渡り、ハルトマンへと吸い込まれていく。
「これはこれは王子さま。わざわざわたくしめの為にご足労戴き、誠に恐悦至極でございます」
芝居がかった言葉使いで、ハルトマンは言う。口元にはいやらしい笑みが、浮かんだままだ。
ここまで来て、まだ余裕をかませるとはある意味尊敬に値する。
まぁ、普通に考えたら敗北などありえない。
「黙りなさい逆賊。貴方に言葉を発する権利など、最早無いのです」
「これはこれは手厳しい。ですが、貴方にそのそれを決定する権利が無いはずですが」
二人の視線はぶつかり合ったまま、外れることは無い。
互いの覇気がぴりぴりと肌を刺す。
その間にリオンはここまで護衛を勤めてきた男に目配せをする。
一瞬、眉をしかめて躊躇う節を見せたが、音も無くそのまま姿を消す。
「さぁさ。バカのごたくはその辺りで終わりだ」
刀を片手に、リオンは一歩前に出てそういう。
「さぁ、楽しい楽しい懺悔のお時間だ。跪いて神様にでも許しを請いな。来世では良い人間になれますようにってな」
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