狼の牙

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咄嗟に体ごとそらすことによって回避するが、鼻先を掠める。 「……っ!」 じわりと血が滲んでくる。 「本気を出してきたな」少しばかり引き攣った笑みを浮かべて言う。 「本気? 冗談、この程度は本気なんていわないさ。只のお遊び」 苦笑を浮かべてリオンは言った。余裕しかない。 「その余裕、今に消えてしまうだろうな」 「おいおい、夢見がちな少年にしては随分と老けてんな」 「ほざいてろ」 先程とは段違いの速度。どうやら本気になっているらしい。 リオンもそれに応じるように、速度を上げる。 二人が刃を交えるその瞬間、リオンの姿がそこから消えた。 その現象に対して唐突に驚きの表情を浮かべるが、その顔はすぐに引き締まり背後から唐突に現れたリオンの刃を防いだ。 幻想即興曲、瞬間的な幻想を生み出し、敵がそれに気を向けている間に自身は背後へ高速移動し攻撃を加える。 リオンの十八番だ。 「うぅ~ン。ブラボー、拍手をしたいねぇ」 距離をとったリオンは余裕をかましながら言う。 「次はこいつだ」幾つもの分身がケーニッヒの周りを囲う。 次は幻想曲のようだ。いくつもの幻が複数現れる。 その一人一人が動き始め、ケーニッヒに対して攻撃を始める。 だが、そのうちの幾つかは既に幻影と見抜いているらしく、よけることもしない。だが、幾らかの攻撃は回避していた。 流石に一瞬で全ての幻影を見抜くのは難しかったらしい。 それでも回避し損ねた攻撃がケーニッヒの体を傷つける。 「おいおい、どしたぁ? 随分傷がついているようだが」 「ほざけ糞餓鬼」 「さて、そろそろ地味なのにも飽きて来た。派手なの、行ってみようか」 リオンはそういうと刀に炎を燈す。 右足を引き、刀と体が垂直になるように構える。 そしてそこから放たれるのは、烈火の突き。 「百火繚乱」幾つもの紅い花が、愚かな人間の体に咲き乱れる。 それはまるで人間を養分にしているかのように見える。
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