狼の牙

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バルコニーに出たジェンは高らかに勝利宣言を告げる。 その声に呼応して兵士達から歓声が上がる。 その騒ぎに、ワルキは目を覚ました。 「ここ、は」ぼんやりと呟くワルキ。 「本当に運だけは良いな、まったく。生き残っているなんて」 リオンは寝転がって目を覚ましたワルキに向かってそういう。 「まったく、そいつがお前を連れてきたときには少し焦ったもんだ。何せ血まみれでボロボロだったんだからな」 「俺は……生きているのか?」 「ああ、生きているさ。何せそこにいるくっそ強い男が助けてくれたんだからな」 リオンが視線を向ける先には敵のリーダーを殺した男が。 彼は背を向けて、口を閉じている。 「小僧、筋は悪くない。これからも精進するんだな」 それだけを言い残すと男は去っていく。 「まて! あんたの名前は!」 男はワルキの問いに答える事無く、その場を後にした。 それを見ていたリオンはニヤニヤと笑いながら、 「あいつも素直じゃないねぇ。もうちょっと話くらいしていけば良いものを」 なんて呟いた。つまり、リオンはあの男の正体を知っているという事とになる。 それに対して言及する気にもなれないワルキは、体から力を抜いていった。 「また寝た。ったく、寝るのが好きだなぁおい」 やれやれと、溜息を吐くとリオンはワルキを担いで、その場を後にした。 後は自分達の助力など無くとも、立て直すことが出来るだろう。 ブラックマン大尉の所まで行くと、すぐに撤収するように言う。 長居は無用だ。 それに十分に役目は果たせた。 まぁ、目的の半分は果たせていないが、後日あらためて行えば良いだろう。 というか、みんな目的を忘れていた辺りが、抜けているというか、お人よしというか。 まぁ、そんなこんなで、十分に満足した一行はキホリア国への岐路に着くのであった。
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