エチュードそしてプレリュード

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まったくもって嫌な予感というものだけは、妙にあたるものだ。 なんて感慨深く考えていると、女性はげらげらと笑いながら一人歓声を上げる。 「いやぁ、一回やってみたかったんだよねぇ、こういうの。やっぱ気持ち良いよなぁ!」 豪快に笑う女性。 全く、非常識な女だ! げほげほと咳き込みながらファイはそう思う。 まともに顔を見ていなかったが、よくよく見てみると相当の美人だ。 すらっとした背、艶やかな髪、整った顔。快活に笑う姿に心奪われる男性もいるのではないのだろうか。 年の頃は二十五歳くらいか。年上で活発な女性が好きなら、きっと一目ぼれすること間違い無しだろう。 そんな彼女に対して刃を向ける女子生徒が一人。 「貴女、何故ここに来たのかしら」 歪に歪んだ剣を向け、炎を吹き出してそう尋ねるのはスクルド。 相変わらず、感情が読み取りにくい表情だが、今回はえらくご立腹であるらしい。 「クルド、この人君の知り合い?」 ファイはクルドにそう尋ねる。 「ええ、一応は。本当は知らない、と答えたいけど」 殺気を隠そうともせずに、クルドはそういう。 殺気立つという事は敵であるという可能性が高い。 自然とファイも警戒してしまう。 「ちょっと待て! 心配になって見に来てやったって言うのに、何だこの仕打ちは!」 「黙りなさい。バイクで教室に突撃するなんて非常識な真似、しないでもらえる?」 「良いじゃないか、そんな事。一々、バイクから下りて階段上がるのが面倒なんだよ」 なんだろうか、何処かの誰かを見ている気がする。 「って、そんな事はどうでも良いわよ! 貴女は一体何者なの!」 カレナが髪についた破片を振り落としながら苛立たしげに尋ねる。 「ああ、自己紹介が遅れたね。私はベル、ベル・クラウディー。この子のお姉ちゃん見たいなもんかね!」 がっはっは、と大声で笑う。 姉、というと一つ心当たりがある。 「巫山戯た事を言わないで」 フランベルジェを握る手が強くなる。
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