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だが、その前に「リオンの恋」と言う単語に、ファイもカレナも踊らされてしまった。
あのリオンが女子生徒を、しかも転校生を高級レストランへ食事に誘うなんて、信じられないのだ。
間近にあれほど美人の使い魔がいて、満足では無いのだろうか、とも思ったのだ。
それ以前に、ヘルの美しさに心を満たされない男が、幾ら美人でも、同学年の女子に心ときめかすなんて、信じられない事だったのだ。
まぁ、今回盗聴してみて、只の勘違いだった、と言う事が判明したのだが。
「委員長は、あまり首を突っ込まない方がいいかもしれないな」
どうせ、またリオンの周囲を洗うつもりの委員長に向かってそう忠告しておく。
「何でよ。私が、調べちゃまずい事でもあるのかしら」
当然、委員長は口を尖らせて反論してくる。
「いや、別に止めはしないけどさ……」
どうせ、またリオンがどこかで、自分に対しての情報を操作するに決まっている、と思ったのだが、それを口に出すことはしなかった。
「ギルドの幹部クラスがいるんだからさ、この事を外部に洩らす訳にもいかないだろうし」
「そりゃあ、そうだ。なんてったって彼女は俺の監視を名目にこの学校に来ているのだからな」
不意に背後から声が聞こえて来た。
五人は驚いて一斉に距離をとり、魔法が使用出来る体制になる。
この辺りは、戦術を学んでいる学生らしい。
「おおっと、反応がいい事は悪くないが、俺を攻撃しないでくれよ」
声の主は両手を上げて、ほんの少しだけ驚いた風を見せる。
「……リオン様。一体いつからそこに居たのですか」
「ついさっき」
呆れ果てた風にファイがそう言うと、リオンはさらりとそう言ってみせる。
神出鬼没にも程がある。
「ほんとに驚かせないでよ、もう」
カレナも口を尖らせて、手に集めていた魔力を四散させる。
「まったく心臓に悪いったらありゃしないわ」
「はっはっは。悪かったな。折角無料券を融通してやったってのに、二人で来なかったお前達を驚かして見たくなってな」
大口を開いて豪快に笑うリオン。
思っていた通りの反応が見れて、嬉しかったのだ。
「それよりも、盗聴ってのはまた趣味が悪いね」
リオンはそう言って、手の中にある物をカレナに投げつける。
彼女は反射的にそれを受け取ると、手中に収めた物を確認する。
それを見た瞬間に、ファイは、あ……やっぱり、と内心溜息をつきながら呟いた。
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