エチュードそしてプレリュード

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「ちょッ! 待って剣を引いて!」 「嫌。貴女を殺すくらい、どうって事無いの」 「分からない子だねぇ」 溜息をつくベル。 剣をそのまま、首に当てて引こうとする。 フランベルジェに斬られた傷はそう易々とは治らない。 だが、ベルの首には傷一つついていなかった。 舌打ち一つ悪態をつく。「本当、忌々しいくらいに硬いわね」 へっへっへー、と子供っぽい無邪気な笑顔を見せるベル。 どちらかといえば、クルドの方が姉のように見えるが。 「おいおい、すんごい音がしたけど一体何があったんだ」 よりによって一番話をややこしくさせる人間が現れた。 おとなしく屋上で昼寝でもしていれば良いものを。 「お、お前さんは!」 「うげ」あからさまにいやそうな表情をするリオン。 「特に問題は無かったみたいなので俺はこれで……」 さっさと逃げようとするリオンだが、ベルは逃そうとしない。 「何のごようでせうか、ベルさん」 「まぁまぁ、あたしの妹が世話になってっから挨拶しにこねぇとなって」 「それで、この惨状かよ」 「はっはっは、こまけぇ事は気にスンナよ!」 「何処が細かい事なのかしら?」 次は躊躇い無く、剣を振り下ろすクルド。 その剣速の速い事速い事。本気で殺す気で振り下ろした一撃だったに違いない。 だが、そんな彼女の攻撃も全く通用しない。 舌打ちを一つすると剣を引く。 「きちんと修理しなさいよ」 「面倒だなぁ」 「貴女が得意だという事は知っているの。貴女の専門はむしろそういった類でしょう」 ぶつくさ文句を言いながら飛び込んできた穴を修復する。 時間が巻き戻るかのように壁がその姿を取り戻していく。 「ほら。これで良いだろう? 全く、お前は……」 「その台詞は貴女に相応しいと思うのだけれど」
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