エチュードそしてプレリュード

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あんなのと一緒にしないで、とカレナは吐き捨てる。 とはいっても似ているのだからしょうがない。 二人とも自分の信じるものに対してはバカみたいに正直なのだから。 「ま、尤もお前さんだけがその気でもねぇ」 つまらなそうにリオンは言う。 こういったことに関して必死になりすぎるのは彼女だけだ。 勝利に対しての執着心というよりも、敗北に対する嫌悪のほうが強いといった所か。 今回もまぁそれなりに手を抜こうかと考えているリオンに、まさに予想外の一言が襲ってきた。 「何を言っているんですか?今回ばっかりは無茶をしてでも勝ちに行きますよ」 ファイのこの言葉だった。 普段なら勝利への追求ではなく、自身の安全という無難な選択肢を選ぶ彼がこういった大胆な発言をするのは珍しかった。 「父さんと母さんはこの大会で優勝したんだ。俺も、この大会で優勝したい」 いつも以上に闘志がめらめらと燃えている。本当に珍しい。 「……因みにあの二人が優勝したのが幾つの時か覚えているのか?」 「俺達と同じ、歳の頃です」 それを言われると後に引けない。 確かにクロノとキリエは十六にしてこの学園の頂点へと辿り着いた。 だが、それからが地獄の始まりだったのだが。 思い出したくも無い記憶だ。 ピアナの返答は決まっているし、ワルキもカレナに似たような意見だろう。 だとすれば、残ったリオンの回答は一つだけ。 「なら決まりだ。帰ったらみっちり特訓してやる。四人まとめてだ」 覚悟をしていろよ? そういうリオンは今まで以上に楽しそうな表情をしていたのを、この時の四人は見逃さなかった。 各チームが決定し、放課後を迎える。 余談ではあるが、ベルはあの後普通に階段を昇ってきて、クルドに抱きついていたそうな。 割とシスコンな姉たちのようだ。 さて、訓練初日ではあるが、学生諸君はみんなやる気が凄まじい。 貸し出される訓練室は既に大勢の生徒達が占領している。 そんな中、ファイ達だけはとある部屋の中に居た。 誰も居ない、五人だけの部屋。 転移魔法陣により、辿り着いた場所だ。 どうやらここは特別に作った部屋らしい。 何が特別なのかしりたい。
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